知的資産の活用ということはよく言われます。しかし、うちにはそんなものないよ、うちは営業なんだからとか、そんなの建前だろう という企業は多いでしょう。しかし、実は身近なものなのです。この例を見れば、どの会社にも知的資産があり得ることを理解していただけるでしょう。

  皆さんは iPhone や iPad をお使いでしょうか?

  iPhone や iPad にはキーボードがなく、画面の一部にキーボード状のものが現われます。こんな感じ。

iphone iPadのキーボード


  iPad はかなり大きいので問題ありませんが、iPhone では画面自体が小さいので、ひとつひとつのキーの大きさはかなり小さくなります。この画面の場合、ひとつの文字キーの大きさは5ミリ前後です。それを指でタッチするわけです。結構、タイプミスがありそうですが、意外にきちんと入力できてしまいます。

  ひとつには、この図のように単語候補が出てくるということもありますが、実は、単語の候補を表示しない場合でも、iPhone は次の入力文字を予測して、キーの認識領域を広げているようです。そういう発明が特許になっています(2009年7月21日に出願され、去年の7月31日に米国特許として成立)。

  例えば、この図では、Indepe まで入力しています。次に n が入力される可能性が高いですよね。そうすると、n のヒット領域を広げてしまうわけです。上から人が飛び降りて来そうな場合に、このあたりに落ちてきそうだから、しっかり毛布広げておこうぜって救助隊が用意している感じですね。

  この特許の特許請求の範囲、全文は長いので、その核心部分を挙げてみましょう。

A computer-implemented method, comprising: ... updating a size of an adjustable undisplayed hit region for at least one of the plurality of the key icons in accordance with the sequence of individual touch points input by the user, wherein the updating includes changing the size of at least one adjustable undisplayed hit region.

  省略した ... の部分は、要するに、キーアイコン(文字キーを表すアイコン)それぞれに、調整可能な、表示されないヒット領域が設定される仕組みだ というような話です。下線部分にあるように、この表示されないヒット領域入力は、文字入力のシーケンスに応じてアップデートされるわけです。

  アップデートというのは、上で言った救助隊の例で言えば、次、こっち来そうだからこっち広げようぜ、的に毛布を広げたり狭めたりしている感じですね。実際、文字アイコンの位置によってはどういう広げ方をした方がよいとか、あり得るわけです。

  要するに、この程度でも特許は成立し得るわけです。大事なのはアイデアです。

  皆さんやお知り合いの会社で、この程度のことを考える人はいるのではないですか?あるいは、この程度のアイデアは既にあるのではないでしょうか。別に自社の扱う製品でなくたっていいのです。

  つまり、知的資産やその可能性はほぼどこにでもあるわけです。ただ、ほとんどの場合、それは見過ごされています。幸運の女神には前髪しかないといいます。知的資産の神には後ろ髪もありますが、やはり、前髪をいかにつかむか が重要です。