長時間の残業(時間外労働)、殊にサービス残業が常態化しているのが日本の企業の特徴と言われますが、これを放置していると企業側が大ダメージを受けることもあります。

賃金未払い時のペナルティ

  特殊なケースを除いて、所定の労働時間を超えて労働させれば当然に賃金の支払い義務が生じること、時間外労働や深夜労働であれば25%以上の、休日労働であれば35%以上の割増が必要になることはよく知られています。

  しかし、払うべき賃金を払っていなくて民事訴訟まで提起された場合、どのようなペナルティを受けるのかということまで知っている方は意外と少ないようです。

  まず、遅延損害金。これは通常の商事に関するものであれば年6%ですが、未払い賃金が問題となるケースで労働者が退職してしまっている場合、退職日以降の利率は年14.6%に跳ね上がります(賃金の支払いの確保等に関する法律6条1項)。

  そして、付加金。これは、労働者の請求によって裁判所が支払いを命ずることができるとされているものですが、その額は「未払い金と同一額」(労基法114条)。つまり、100%の加算、倍額の支払いがあり得るということです。

  未払い賃金請求訴訟を提起された場合、これら特別な遅延損害金や付加金によって、賃金の不払いで得ていた利益以上の損害を被るリスクが高まります。そのため、事前策を講じてそのリスクを回避することが肝要となります。


未払い賃金請求の事前対応策

  最も単純で効果的なのは、「残業をさせない」ということです。「それができれば苦労はしないよ。」との声が聞こえてきそうですが、ダラダラ時間をかけて仕事をして会社に居座る従業員に対しては有効な手立てです。

  単に「残業をするな」と告げているだけでは駄目で、業務を終了させて帰宅するように上司が明確に指示すること等が必要となりますが、そういった対応を徹底させていれば一定の効果があります。

  証拠という点に注目するなら、「タイムカード等をきちんと管理する」というのも一つです。これらは労働者側にのみ有利な証拠となるわけではなく、適正に労働時間を反映したものを作成して管理していれば、「毎日○時間程度残業していた、自分で作ったメモが証拠だ」という労働者側の主張を封じることが可能となります。

  意外に効果的なのが、「訴訟を起こさせない」という手です。少なくとも付加金について言えば、訴訟にならない限りこれを支払う義務が生じることはないのですから、訴訟前交渉で和解を試み、場合によっては供託も活用すれば、後のダメージを大幅に軽減できることになります。

  訴訟するとなれば双方にコストもかかることですし、訴訟の勝敗や係争額のバランスを見て適切に対応すれば、訴訟前に矛を収めさせることは十分可能です。

  管理監督者の適用や、固定残業代、みなし労働時間制などは残業代請求に対する有効な対策とはなりません。要件が厳しかったり、そもそも使用者側に金銭面で有利に働く制度ではなかったりするからです。

  未払い賃金問題は、現在は日本企業全体の慣習もあってまださほど表面化していませんが、一度噴出すれば会社そのものが吹き飛ぶことにもなりかねません。知らないうちにリスクを抱え込んでしまっていないか、一度チェックして、もし問題があるようなら早めに対策を講じて、紛争の芽は摘んでおいた方がよいでしょう。

  以上