平成25年4月19日に閣議決定された「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」,いわゆる「消費者被害集団訴訟制度」を御存じでしょうか。

  日本版クラスアクションとも呼ばれていますが,この法案は,少額の被害を被ったに過ぎない消費者が,容易に被害を回復できるようにすることを目的としており,今までは泣き寝入りをしてきた消費者に被害回復の道を拡げるものとして,期待される面が確かにあります。

  もちろん,被害を与えてしまった企業側には責任があり,その賠償をしなければならないことは当然のことでしょう。しかしながら,この制度は,企業側にとって,コスト増となる危険を孕んでいるとの指摘がなされております。

  まず,この制度は,国が認定したいわゆる適格消費者団体が,消費者被害を発生させた企業を訴えます。訴えの段階では,被害に遭った消費者から個別の委任を受ける必要はありません。そして,訴えを起こした適格消費者団体側が勝訴すれば,次の段階に進み,被害を受けた消費者に周知され,その段階になって初めて被害を受けた消費者が訴訟に参加して,実際に被害の回復を受けるということになります。

  企業側の責任の有無は,適格消費者団体と企業との間で行われた訴訟により判断されますので,企業がその責任を否定するためには,その段階で必死に戦う必要があります。そのためには,弁護士を代理人に立てるなど,コストもかかってくることになります。

  通常の訴訟では被害者が異なれば,被害者ごとに訴訟が提起されるため,それぞれに応訴を余儀なくされるということはありますが,少なくとも,同じ被害者から同一訴訟を蒸し返されることはありませんので,ある消費者から提起された訴訟において,企業側に責任がないと判断されれば,それは確定します。

  しかしながら,日本版クラスアクションでは,適格消費者団体が提起した訴訟で企業側がいったん敗訴すれば,もともと訴訟など考えていなかった消費者が次々と訴訟に参加してきて,最終的に莫大な賠償金の支払いを余儀なくされる恐れがあるだけでなく,逆に,企業側が勝訴しても,個別の消費者に対しては,その効力が及ばないとされていることから,個別の消費者から別途訴訟を起こされる余地を残しているのです。

  そうすると,適格消費者団体との訴訟において,企業側としてはコストをかけて勝訴したにもかかわらず,今度は,個別の消費者から別途訴訟を提起されて,再びコストを掛けることを余儀なくされる恐れがあるのです。

  この法案が成立し,施行された場合には,企業としては,そのコストを見込んで,商品ないしサービスに価格転嫁せざるを得なくなりますが,そうなると,消費者が逃げてしまい,企業の経営も悪化しかねません。企業としては,この法案の行方に注視しておく必要がありそうです。