株式会社ドリコムが「フルボッコ」を商標出願したと一部で話題になっているようです。

出願の詳細はこちら。
【出願番号】商願2013-47462(T2013-47462)
【出願日】平成25年6月20日(2013.6.20)
【商標】フルボッコ
【標準文字】
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
 第9類 携帯電話機,携帯電話機用ストラップ,その他の電気通信機械器具,ダウンロード可能な携帯電話・携帯電子計算機端末用のゲームプログラム,ダウンロード可能な携帯電話・携帯電子計算機端末用の教育用プログラム,ダウンロード可能な携帯電話・携帯電子計算機端末用のプログラム,ダウンロードが可能なゲームプログラム,電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲームおもちゃ用のゲームプログラム,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のゲームプログラム,業務用テレビゲーム機用のゲームプログラム,レコード,ダウンロード可能な携帯電話用の着信メロディ,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,電子出版物
【出願人】
【氏名又は名称】株式会社ドリコム


「フルボッコ」とは?

  まず、「フルボッコ」とは何か。語源的にいえば、「フルボッコ」とは「フルにボッコボコ」から来ており、
・完膚なきまで叩きのめす(叩きのめされる)こと・状態
・袋叩きする(される)こと・状態

  を指します。

  新聞記事やニュースで使うような言葉ではなく、若者の間やネットで使われる言葉でしょう。そういう事情もあってネットで話題になっているのかもしれません。


こんな言葉も登録商標  「ホームラン」、「おとうさん」、「おかあさん」

  さて、商標について、特にネット社会では、ある言葉がネット社会で有名になり慣用されるようになった場合、それを私企業が独占するのはいかがなものかという感覚があるようです。つまり、”横から入ってきてタダで持っていくのか?””しかも独占しようなんてひでえ奴だ” ということですね(※)。

※この典型的な事例が「のまネコ」事件ですが、こちらの詳細は別の機会に

  これはある意味、もっともな感覚です。商標は、基本的には商品やサービスに付随したものです。使用によって信用を蓄積したり、あるいは、鋭い感性によって世の中から言葉を抽出したり創出するからこそ、消費者もそこに価値を見出すわけです。

  ただ、日本の商標法では、世の中に既に存在する言葉を自己の商品・サービスの商標として出願することは、基本的には禁止されていません。例えば、「ホームラン」はいくつもの企業が商標登録しています。「おとうさん」「おかあさん」でさえ登録商標です。もちろん、これは、特定の商品・サービスについての話であり、その言葉について包括的に権利が発生しているのではありません。

  また、ある商品の普通名称を普通に表記したものをその商品について商標として登録することはできません。例えば、しょうゆという商品について「しょうゆ」という商標を登録することはできません。

  このほかに「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」も商標登録できません(商標法3条1項6号)。これについての最近の有名な例が「おんせん県」騒動です。


商標登録されれば、ゲーム「フルボッコ」等は商標権侵害に

  さてさて、「フルボッコ」に戻りましょう。ドリコムさんは、ソーシャルゲームなどのモバイル/PC 向けのエンタメコンテンツの企画・提供を行っている会社なので、「フルボッコ」の意味や背景・使用状況などについては、よくわかっていると思います。しかも、ゲームの場合、何かの敵を倒すというゴールもよくあります。「フルボッコ」にしたりされたりはよくあることです。

  ただ、注意すべきは、仮にドリコムさんが、この商標出願(現時点では出願です! 登録ではありません)の登録を受けても、例えば、
・LINEで 「○○というゲームでボスキャラをフルボッコにしてやった」とか
・「××というゲームをディスったら、みなからフルボッコにされた」

  ということを書いてもなんら問題はないということ。

  あくまで、携帯電話機やゲームプログラムなどに「フルボッコ」という名前を付けて作ったり売ったりすれば商標権侵害になるというにすぎません。ゲームについてのコメント・言説・論評が制限されるわけではありません。


商標登録される可能性が高いと考えられる理由

  ということで、なが~くなってしまいましたが、結論です。

  まず、「フルボッコ」の商標出願がきっかけでドリコムさんがネットでフルボッコにされる可能性は極めて低いでしょう。「フルボッコ」自体、ネットでできた言葉でもないですし、特に愛されている言葉でもありません。また、あくまでも、携帯電話機やゲームプログラム等を指定した出願なので、登録されても一般ユーザーにはほとんど影響がないからです。

  また、そもそも、商標登録されるか否か、これはたぶん、登録されると思います(※※)。上に述べたように、仮にこれが一般的な言葉であったとしても、携帯電話機やゲームプログラム等の普通名称ではないからです。商標法3条1項6号が適用される事例でもないと思います。

  いずれにしても、今後の展開がどうなるかは、みてのお楽しみ。どこかで採り上げられていたら、あの「フルボッコ」だと思い出してください。

※※但し、先出願の商標に類似のものがあれば登録を拒絶される可能性はあります。