【事例】
 あなたは、無料通話アプリ開発を主な事業とする企業(以下、A社といいます。)を経営しており、ある日、A社の成長のため、B社から、ソーシャルネットワークアプリを買い取ることにしました。

 ところが、アプリを購入した後になって、B社が提出した資料が利益率を高く見積り過ぎていたことに気付きました。ちなみに、A社とB社との間では、契約の中に以下のような条項を入れていました。
第○○条
(1) B社は、A社に提出する本アプリに関する資料の全てが完全かつ正確であることを表明し、保証する。
(2) B社は、前項の表明及び保証の違反に起因してA社に損害が生じた場合、かかる損害について、A社にこれを補償する。
 つまり、「B社の資料には間違いがない」と約束しているのです。(これを表明保証といいます。)

 あなたは、B社に嘘をつかれたので、払い過ぎたお金を賠償してもらおうと考えています。


問題点

 B社の契約違反を理由に、契約どおりに払い過ぎたお金を補償してもらえるでしょうか。

回答

 B社は、提出資料は誤りがないと約束しているのだから、当然払い過ぎたお金は支払ってもらえると思うかもしれません。しかし、会社同士の取引なんだから、B社が一枚上手だっただけじゃない?と言われてしまうかも知れません。

 では、裁判例はどのような判断をしているのでしょうか。アプリではなく企業そのものを買収したケースですが、買収された会社の貸借対照表に水増し資産があったという事案で、裁判所は以下のように判断しています。

原告が被告らは本件表明保証を行った事項に関して違反していることについて善意であることが原告の重大な過失に基づくと認められる場合には、公平の見地に照らし、悪意の場合と同視し、被告らは本件表明保証責任を免れる。(東京地判平成18年1月17日判時1920号136頁)


 つまり、「ちょっと注意していれば契約違反に気付いたはず」という場合には、お金を払ってもらえないということです。

 あなたの場合はどうでしょうか?

 B社は、提出資料にあなたが気付かないような巧妙な細工をしていたのかもしれません。逆に、あなたが契約前に資料を徹底的に調査していれば、簡単に発覚していたようなものかもしれません。まずは不当な見積もりに気が付かなかった理由を精査し、その原因を突き止めるところから問題の解決に当たりましょう。

 契約締結前には必要な事前調査を怠らないようにしておく必要があります。もし必要な調査を怠っていたとすれば、あなた自身が善管注意義務違反に問われる可能性もありますので、その意味でも慎重な事前調査が求められている言えるでしょう。