取引相手の売掛金をまとめて担保にとる「集合債権譲渡担保」

 継続的取引関係にある取引相手の信用に不安があるが,既に不動産等のめぼしい財産については担保余力がない場合,「集合債権譲渡担保権」の設定・実行が,有効な信用確保・債権回収手段となります。例えば,御社(A社)が取引相手(B社)に対し,継続的商品納入契約に基づき継続的に商品を納入し,売掛金債権が発生し続けている状況で,取引相手がC社ほか100社に対する売掛金を常時有している場合を想定します。このような場合,B社のC社ほか100社に対する売掛金債権(集合債権=常に発生と回収による消滅を繰り返している債権)を譲渡担保にとることになります。

「集合債権譲渡担保」の方法とは

 この場合,「債権譲渡特例法」により,債権譲渡の登記を経由しておく方法が定められており,その方法により「集合債権譲渡担保権」の設定を行います。当該担保設定には,御社(A社)だけで行うことは出来ず,担保権を設定する旨の合意(A社・B社間)が不可欠であり,合意の後,登記手続を行うことになります。

「集合債権譲渡担保」の行使の方法

 集合債権譲渡担保権を設定している場合でも,あくまでも「担保」であるため,通常のシーンではB社は営業を継続することが可能であり,各取引先から売掛金を回収することになります。いざ,B社に信用不安があり,実際にA社のB社に対する債権の支払いも滞っている状況になれば,A社は,この集合債権譲渡担保権を実行して,B社のC社ほか100社に対する売掛金を自ら回収して自社の債権の弁済に充当することができます。

担保を確実に生かすために

 このような制度であることから,「担保」を正しく活用するためには,御社(A社)側が,取引相手の与信管理を日頃から正しく行い,さまざまな信用不安事由が明らかになってきた場合には,期限の利益喪失に至ることも遠くないと予期した準備も行っておき,実際に担保権を行使しなければならない場合には速やかな取立てを行うことが求められます。

有効な活用に向けて

 集合債権譲渡担保の設定は,もちろん両者間の合意が必要であるため,銀行等の金融機関と借主といった関係性で用いることが多く,対等に近い契約関係においては,平常時から導入されるものではありません。
 ただし,法律上は,銀行等のみに限定された制度ではありませんので,注意を要する取引相手との商取引等においても活用が考えられます。